頚椎症、首の椎間板ヘルニア、腰の椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、変形性股関節症。そんな患者さんが続く中で、
「院長、うちのお母さんを診て欲しいんですが…」
『お母さんも腰の脊柱管狭窄ですか?』
「私は66になりますが今まで元気だったんです。ところが時々咳が出るので病院に行ったら、肺がんの末期。それも色んなところに転移していて、脳以外は全部転移しているんです。それで息子が川井先生に診てもらおうって」
『・・・・・・』
院長、脈を診ながら
『骨にも転移してるって?』
「でも川井先生、私は負けません!」
院長唖然として『・・・・・』
「手を挙げると背中が痛いんです」
この患者さんずいぶん脈が速いな。緊張してるのか?そう思いながら
『横向きになってみて』
最近、やけに患者さんにガンが多いんです。院長はかならず右横向きにさせて、右の首に鍼を打ちます。手が吸い込まれるようにソコに行きます。
スタッフ「これでガンでも転移が治っちゃうんですか?」
と院長に聞くと、
『まず手を挙げると痛いと言っていたよな。それを治す。それとこの人、絶対負けないって言ってたよね。そんな患者さんに効くツボが
あるんだよ。思ってもみないような力が出るポイントがあるんだよ。この55年で見つけ出したんだよ。』
「でも院長、お母さん明日からがんセンターに入院するって言ってますよ。」
『入院して抗がん剤を使うと、みんな副作用でおかしくなっちゃうんだよなぁ。うちに来る患者さんみんな末期もいいところ。また副作用でもう一度来られるのかな。』
そういえば抗がん剤の会社の2000人も部下を使っているという部長さんが「ガンの薬は、川井先生、効きませんよ」そんなこと言っていいのかな。
スタッフ
うちに来る患者さん、みんな副作用で泣いている。最近、末期もいいとこの患者さんがたくさん来られる。来られてもまた次の病院に行って抗がん剤をやるという。
いつもなら院長は“手術はするな!私に任せろ!”というのに、この時ばかりは『また他の病院で抗がん剤やるのか、そうか』と小さな声で頷く。患者さんより院長の後ろ姿が寂しそう。きっと自分の無力さに意気消沈しているのだろう。“私に任せろ!命がけで治してやる!”と言えない歯がゆい自分に肩を落としているのでしょう。
