院長がこだわっている頚椎のポイントの取り方、僧帽筋のポイントの取り方。
院長は僧帽筋の1本のラインに『電線の上にスズメが止まっているような感じで刺して欲しい。』器用なスタッフ、みんな簡単そうにポンポン、ポンポン鍼を打つ。
「上腕が重くて肩甲骨が苦しくって背中が痛いんです。」この患者さん、病院へ行ったけど原因不明。何をやっても治らず母親の勧めで来院。
スタッフY“いつもやっているポイントだし毎日同じような患者さんもきてるし、まぁこの治療なら鼻歌混じりでもできるな。”
いつもなら楽になる他の患者さん。
この患者さん、まだ痛みが取れないという。
院長はカーテンの陰で“きっとこの患者さん、痛みが取れないぞ”と思ったのだろう。
VIP室の患者さんを待たせながら治療の行方をカーテン越しに聞いていた。
そして僧帽筋に鍼が綺麗に並んでいるのをみたのだが「ちょっと違う。」と院長。
何回もポイントとラインをやり直しさせ、ある程度納得すると院長が少し鍼を抜いて鍼先を方向転換している様子。
10本も刺した鍼先の方向転換を行い、スタッフが患者さんに「どうですか今は??」
「今は痛みがありません。何かコリ感は少しありますが背中が楽になりました。」
患者さんが笑顔で帰った後、
スタッフY「私、実は朝飯前だと思っていたんですが、患者さんによって随分違うんだなぁ。院長がいつも『電線に止まっているスズメのように鍼を刺しなさい』という言葉の意味がよくわかったんです。」
院長「100人のうち99人は分からないんだよ。1人だけ分かったということは凄いことだ。何しろ難しいんだよ。だから私は今でも苦しんでいるんだ。50数年やっていても『やっと思うような治療ができた!』と安心した時、また出来た!と思った時、簡単なものが治せなくなる。人間、安心とか、満足とかそれが1番いけない。
何しろ常に緊張して油断しないことだ。そんなことを長年やっていても感じる毎日なんだよ。だから逆に面白いのかもね。」
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